視察に行って、何を変えましたか?

はじめに
突然ですが、会社や経済団体や、 その他いろんな場面で
視察に行くこと、行ったことないですか?
多くの方は経験があると思います。
そこで質問です。
今まで、視察に行って、 何か変わりましたか?
東京すごい。
アメリカってすごい。
刺激になりました。
勉強になったよ。
良く聞きます。
そこでさらに質問です。
で、何を変えました?
断言します。
何も変わらないなら、 それは視察ではありません。
このブログの読者さんや
逆襲LAB会員の皆さんからいただく
質問があります。
それは、各地での マーケティング事例を見に行く
いわゆる、視察、に行く際に
「どうやってあそこまで見れるんですか?」
です。
時々、一緒に視察に行く方からは
「ブログ読んで、自分はただ、 なんとなく見てただけだなあ
どうやってああいう見方してるんですか?」
って聞かれたこともあります。
正直、私としては特別なことは
してるつもりはありません。
いつもどおり
ただ、ほとんどの人がやっていないことを
2つやっているだけです。
今日はそのお話です。
視察がただの観光になる理由
視察が単なる観光になる理由は たった一つだけ
それは「見に行っているから」です
考えに行っていない
だから「視察」が 「ただ見るだけ=観光」で
完了するのです。
時々、政治家やお役人の視察が
「ただ税金で遊びに行ってるだけ」と
問題になるのも根っこは同じだと考えてます
一言で表すと
見に行くと、目立つものしか 目に入ってこない。
それは、何を見るべきかが 決まってないから
私がやってること
私がやっていること、それは
①「仮説」を持って行くこと
②仮説を分析するための道具を使うこと
です。
ちょっと前になりますが、 今年の2月に東京に視察に行きました。
3か所の現場に行きました。
テーマは、東京インバウンド最新事情
何を見に行ったかというと
インバウンドの購買に関して
以前とは判断基準が変わってるのでは?
ただ、「変わってるのでは?」 では仮説になりません
仮説を立てるときに大切なこと
それは、仮説が正しいのか?
間違ってるのか?が分かる形にすること
3つのステップで 「外れたとわかる仮説」が作れます。
① 定説を書き出す=
外国人は日本の文化・自然・食を求め
日本製品を爆買い
② それが今も本当なのか疑う
③ 「AからBへ」の形にする=
外れたと分かる形にする
そうやって出来上がった仮説が、これです。
日本らしく見えるものから
日本でしか手に入らないものへ
この時の視察ではこの仮説を
確かめに行ったんです。
結果、どうなったか?
仮説がメチャメチャ外れました(笑)
じゃあ、なんで「外れた」と気づけたのか?
なんとなく見ていたら、
外れたことにすら気づきません。
外れたと気づくためのフレームワーク
これを私は
「視察構造ゲキ掘りドリル」
(以下「ゲキドリ」と呼びます)
と名付けました。
「見る」という行為を5つの階層に分けて
それを掘り進めていくようなイメージ
その中の第5階層、ここで言う「文脈」とは
顧客の言動や商品・情報を取り巻く
背景、状況、前後の文脈(ストーリー)のこと
です。
今回の視察先の一つ
羽田エアポートガーデン※1で見てみましょう
仮説=
羽田エアポートガーデンでの
インバウンド需要は
日本らしく見えるものから
日本でしか手に入らないものへ


第1階層=表示
・2年前とあまり変わりなく
英語と繁体字とハングル表記必須
・POPイメージもデザインも
「THE・JAPAN」
第2階層=商品
・日本人なら町では買わなそうな
扇子・りんご飴・こけし等多数
(日本でしか手に入らないもの)
・同時にコンビニの棚にはサンドイッチや
おにぎりが大量に陳列
(日本の日常、でも外国人には
日本でしか手に入らないもの)
第3階層=空間
・甲冑や桜の演出はオープン当初から変わらず
・空きテナントがちらほら
第4階層=行動
・外国人は多いがにぎわってる感じではない
・お店を見てる人もいるのはいるが、
半数くらいは素通り、飲食店も人はまばら。
・購入してるシーンはあまり見なかった
・ただしコンビニの食品は売れている。
店員さんに聞くと「毎日売れる」とのこと
・大きなスーツケースを持ってる外国人がほとんど
(2年前はスーツケース無しが多かった
旅行中にわざわざ来たか、コインロッカーに預けたか)
第5階層=文脈
・移動を目的にしてるだけの方がほとんど
という私なりの分析になりました。
ここで重要なのは1~3階層
ここは「なんとなく見る」でも見える部分
ココだけ「ただ」見ると、2年前と変わらず
インバウンド特化、売れてるんだろうなあ
と、私は思ってしまったかもしれません。
ただ、実は3階層の時点で、 小さな違和感はありました。
空きテナントです。
でも、これだけでは確信になりません。
「たまたま入れ替え時期」の可能性もあります。
その違和感も持ったうえで、次の階層へ掘り進めます。
4~5階層
パっと見では気づけないが、よくよく
「ゲキドリ」で掘ってみると見えてくる
部分まで見た時に「あれ?あれれれれ?」って
思いました。
明らかに、以前とは違う。
何が違うかというと、インバウンドの皆さんが
いるのはいるんですが、反応が薄くなり
買い物もしなくなってる、
そしてさらに、素通り=飛行機に乗るために
羽田に来ただけ、という外国人の割合が増えている
そう、私には読み取れました。
「ゲキドリ」、実はこの
3階層と4階層の間の線引きを超重要にしてます。
なぜなら、ただ見ていて
見えること と 見えないこと の境目がここだから
このボーダーラインを超えた時に、
仮説が正しかったのか?の輪郭が
少しずつですが見えてきます。
この羽田エアポートガーデンの例では
仮説:インバウンドは今、 日本でしか手に入らないものを買う
羽田で見たもの
サンドイッチ
(日本でしか手に入らない)→ 売れる
扇子・こけし (日本でしか手に入らない)→ 売れない
結論:仮説は外れた。
日本でしか手に入らないものでも、 売れるとは限らない。
では何が分けたのか。
ここから第4・5層です。
客はスーツケースを持った移動中の人(第4層)。
移動のついでに寄っている(第5層)。
だから今食べるものは買い、 持って帰る土産は買わない。
という風に私には見えました。
羽田で感じた仮説が外れた感覚
その感覚を持って、
他の現場視察に向かいました。
買い物に来てる場所ではどうなの?
羽田は、そもそも買い物に来ていなかった。
じゃあ、買い物をしに来ている 場所ではどうなのか? 羽田の後、今回の視察で訪れた他の2現場 浅草の仲見世通り、豊洲市場の千客万来 まずは仲見世通りに行きました。 羽田で引っかかっていたので、 仲見世では最初から「本当に買っているのか」を 強く見ました。 この場所は、相変わらず大量の外国人が 訪れています。 さすが、東京でも3本の指に入る 外国人が好きな観光地。 年間600万人とも言われてる 外国人観光客の賑わいは この日も顕著でした。


仮説はもちろん羽田と同じ 「インバウンド需要は
日本らしく見えるものから
日本でしか手に入らないものへ」 現場では「ゲキドリ」を使い 分析します。 第1階層=表示
・外国人超ウェルカム
第2階層=商品
・いかにも日本的なお土産品多数 ・扇子やこけしなど日本でしか 手に入らないものも多数
・ソフトクリームも多数の店舗で販売
第3階層=空間
・浅草寺に向かっての参道
第4階層=行動
・外国人は大量にいるが購入者は ほとんど見られない ・扇子やこけしは売れてなかった ・ソフトクリーム等の食品も売れてない
・浅草寺内のおみくじは購入する外国人多数
第5階層=文脈
・浅草寺に行って参拝するのが 目的の人が大半に見えた。
次に訪れたのが豊洲市場と隣接する
千客万来※2 千客万来は豊洲市場の道向かいに 一昨年、オープンした
江戸の街並みを再現した
食と温泉の大型商業施設です。


第1階層=表示
・英語表記はあるが、極端に
目立たせることはない
第2階層=商品
・飲食は寿司・海鮮丼が多いが
ラーメンや焼き鳥もある
・物販はほとんどない
・飲食以外は外国人向けが多い
魚詰め放題、忍者体験などもある
第3階層=空間
・江戸の街並みコンセプトどおり
・回遊しやすく1周回る導線設計が秀逸
第4階層=行動
・飲食関係はどの店も外国人が多く 繁盛していた。行列店も。
・豊洲市場本体よりも明らかに人が多かった ・物販はほとんど置いていない
お土産店程度
第5階層=文脈
・市場を見たい →見た後でマグロを食べたい文脈に 私には見えた
買い物しに来ている場所だと思ってましたが
この2現場も、違ってました。
視察が取材に変わる瞬間
3か所の視察場所、仮説はすべて 「インバウンド需要は
日本らしく見えるものから
日本でしか手に入らないものへ」 そして、ゲキドリで見た結果・・・

仮説
「日本らしく見えるもの」は売れてない
「日本でしか手に入らないもの」は売れてる
↑の表見る限りでも
仮説がメチャメチャ外れてます。
何がメチャメチャ外れてたのか?
それは、「日本でしか手に入らないもの」なら
何でも売れるわけではなかった、という点なんです。
羽田で売れたのはコンビニの食品だけです。
仲見世で売れてたのはおみくじ
千客万来で売れてたのはマグロ。
同じ「日本でしか手に入らないもの」でも、
場所によって売れるものが違うんです。
第3層まで見た時点では、仮説は
合ってるかと思えたんです。
でも、実は売れるかどうかを決めてるのは
今回の3現場では4層と5層でした。
4層は客は何をしてるのか?
=スーツケースで移動している、 参道を歩いている、市場を見ている
=サンドイッチは買う、 ソフトクリームは買わない、マグロ丼を食べる
5層は行動背景や前提
=移動・参拝・マグロを見に
この2つを合わせると「来る理由」になります。
この「来る理由」と「売っている商品」が重なってた時
ジャンジャン売れている現場を見ました。
そしてこれ、ゲキドリ1~3階層では
絶対に見えません。
「英語表記あり、日本的な商品も並んでる、
人もたくさんいる」
ここで止まっていたら、
「インバウンド、まだ元気だな~
繁盛してるな~」で終わっていました。
第4第5階層まで掘ったからこそ見えました。
それだけです。
見えた瞬間、ここ、超重要、
予想外=自分の頭で作ったストーリーが崩れた瞬間
あれ?思ってた仮説と違う・・・
それを「オモロっ」って思えるかどうか
この一点に尽きます。
これができた瞬間
視察→取材 に変わります。
気を付けよう
視察で一番危険なのは
確証バイアス※3
それは、自分の仮説に、 現実を合わせてしまうこと
やりたくなるのはわかります
だって、仮説を立てるときに
リサーチして考えて、頭使ったうえで
論理として建ててるわけで、
自分では正しいと思ってるわけですからね。
でも、これをやった瞬間、
その時点で深堀るのをやめてしまい、
視察は無意味になります。
人間、フラットに物事を見てるようで
実は全くフラットには見られていない
視察の価値は、
正解を確認することではない。
自分の思考を壊す
こう思えるかどうか?
大切なポイントのひとつです
おわりに
最初に問いかけた質問
今まで、視察に行って、何か変わりましたか?
このブログを読んだ後、視察に行く際、ぜひ
①「仮説」を持って行く
②仮説を分析するための道具を使う
をやってみてください。
そしてそのうえで
自社にとってのゲキドリ第4層=顧客の行動
第5層=顧客の文脈
このお客様の、自社に来た理由と 買うものが重なってるだろうか?
を考え直してみてください。
視察とは、
情報収集ではありません。
それは、自分の前提を疑う習慣
その習慣を身につけるためのトレーニング
私はそう思ってます。
だからこそ、面白い。
だからこそ、怖い。
そして、だからこそ、
武器になるのです。
※1羽田エアポートガーデン:羽田空港第3ターミナルに直結する大型複合施設。ホテル、天然温泉、ショッピング、グルメ、バスターミナルなどが1つにまとまっている。第3ターミナルは国際線のため、モールを訪れるお客様の多くは訪日外国人。インバウンドの玄関口といえる。
※2豊洲 千客万来:東京都江東区の豊洲市場に隣接する、江戸の街並みを再現した食と温泉の大型商業施設です。2024年2月1日に開業しました。
※3:確証バイアス:自分の持っている仮説や先入観に合致する情報ばかりに注目し、反論や矛盾する情報を無意識に無視・軽視してしまう認知の偏りのこと
逆襲の戦略マーケター山内 東
オンラインサロン「逆襲LAB」 申し込み希望の方は↓




コメント